いろいろおいしい。 -3ページ目

クルスカンポでスペイン出張を占う

激寒のドイツ、灼熱のイタリアと出張が続きましたが。

今度は、情熱の国スペインに飛ばされることになりました!


旅立ちはもう9月の半ば。

通訳がいない中、ひとり一週間の取材旅行。


これはいいかげんたいへんだろうと、

唯一頼りになりそうな友人を呼び出した。

彼女とは、大学の卒業旅行と称して、

スペインのど田舎まで一緒にバス旅行をした仲。

その後、彼女はスペインの魅力にハマって、

スペイン語を学びつつ、たびたび現地を訪れてもいる。


メニューの名前が覚えられるかもしれないと、

入ったのはスペインのバルを模した居酒屋。

生ハム、オリーブ、スペイン風オムレツなど、

おいしそうなタパスが並ぶメニューから

とりあえず頼んだのは、スペインのビール、クルスカンポ。


現地で飲めばいいと思うだろうけど、

こんな不安な出張の前には、

五感どこにでも触れる情報すべてが貴重で、

何かを得ることで、私はちょっとだけ安心することができる。


これはおいしいなあ。

私たち、同じものをおいしいと感じるんだな。

私たち、そんなに離れてはいないんだな。

私たち、わかりあえるかもしれないな。

とか。

何しろ不安だから。


スペインらしく、赤を基調としたかわいいラベルの瓶に入ったビールは、

少し青島ビールに似ていて、甘くやさしい味わいがした。

揚げたポテトに、いい香りのするスパイシーなトマトソースをかけた

あかるくて気軽なスペイン料理、ポテトブラバス。

みじん切りのにんにくと生ハムと一緒に、

たっぷりのオリーブオイルで揚げ煮したフレッシュマッシュルームは、

暖めたバケットにオイルごとのせて。

さらに、日本風に梅肉で和えた甘いイカなどをつまみながら、

スペインの話を聞いた。


治安はとても悪い。バッグは持たずにビニール袋を使って。

でも、タクシーは比較的安全。いいホテルもあるし。

取材なら、笑顔でHola! とあいさつすれば大丈夫!


笑顔でHola! ねえ。

二時間しっかりあるスペインの昼休み、

ゆっくりビールでも飲めば何とかなるかなあ。

にっぽん人ならハートランド

西麻布なんて行きなれない場所で、打ち合わせが早く終わってしまった。


キョロキョロ見回すと、

何やだかすぐにはわからないお洒落な看板がいっぱい。

近づいてよく見ると、オイスターバーだったり、軍鶏やだったりして

へえと喜んでいるうちに、これはどうにも帰れない気分になってきた。


ウロウロした末、同僚と串焼きの「権八」へ。

小泉総理がブッシュを接待した店として有名ですね。


巨大な蔵を思わせる店に入ると、これはもう聞いた通りの

「千と千尋の神隠し」の世界!

通されたのは調理場をぐるりと囲むカウンター席。

見上げると、広々とした吹き抜けで、

1階席を見下ろすように設えたテラス席(というのか)の

あめ色の手すりには、外国人観光客らしき人々が

興味深げにしがみついているのが見える。


客と店員を合わせて、全体の40%は外国人であろう。

それが決して大げさでないと思われる、日常まれに見る外国人率。

これはきっと「地球の歩き方・東京」(的なもの)に出ているな!


生ビールは、キリンのハートランド。

このビールについては、ずっと不思議に思っていた。

ぽってりと厚いグリーンの瓶。

さわさわとやさしい味わい。

ちょいとお洒落な店で、

何の断り書きもない生ビールと思うとハートランドだったりして。

「うまく仕事を選んでいるイケメン俳優」みたいな、

そんなイメージ。

やはりしっかり厚いオリジナルグラスの中で、

ハートランドはゆったりとおだやかで、

仕事がちょっと早く終わってうれしい!なんて

ささやかな幸せをやさしく祝福してくれた。


しかし!

外国人のみなさんは、ビールを飲んでいないのですよ!


みんなが飲んでいるのは、権八特製「みかん緑茶」。

同僚に無理矢理オーダーさせたそれは、

たしかにいい香りのするさわやかなのみものだったけれど、

でもなあ。

焼きたてアツアツの串焼きには、

やはりビールだと思うのですけれど。

みんながみんな飲んでいるなんて、

どんなにすすめてるの?「地球の歩き方・東京」?

スーパードライをみどりの風の中で

ずっと行きたかったところに行ってきた!うれしいな。


それはやっぱりビアガーデンなのだけれど、

いつもの場所とは、んもう全然違うのですわ。

ビルの屋上でもなく、

メニューはから揚げ・枝豆・フライドポテトの3点セットでもなければ、

ジンギスカン食べ放題でもなくて。


明治記念館、ビアテラス「鶺鴒(せきれい)」ですことよ!


火が焚かれる中、

みずみずしくびっしりと生え揃った芝生を

立派な松が囲む広々とした中庭。

その中に、たっぷりと間隔をあけて点々と置かれた

籐のゆったりとした椅子に座ると、

むせかえるほど濃いみどりの匂いがした。

周りもみんなそれぞれに楽しそうで、

でもその声が聞き取れない贅沢な距離が心地よい。


生ビールは、アサヒスーパードライ。

キリキリと辛いスーパードライは、

最近のムシムシと暑い日に特においしいと思っていたビールだけれど、

ここで飲むジョッキは、

なぜか甘く、やさしくおいしくて、

これもみどりのマジック?と不思議。


となりの席があまりにおいしそうで、

思わず真似した牛肉の朴葉焼きが

小さな七輪の上で香ばしいかおりを放つ。

肉が焼けるまでと芝生の上を歩いてみると、

短く刈られた草のぱりぱりした触感に

どーんと倒れこみたい衝動にかられる。

顔から、背中から飛び込んで、

あちこち刺さる草にイテイテと悲鳴を上げつつ、

みどり色の汁に染まりながらごろごろ転がって、

全身でみどりを満喫したくなる。


思いとどまったのは、本日浴衣を着ていたからです。


二本目のピンク色のスパークリングワインを頼むカップル。

日本舞踊を舞った舞妓さんと記念撮影する若い親子。

このみどりの世界の中では、誰もが

普段の生活では出会うことができない

異常に余裕のある人、みたいな感じがする。


異常に余裕のある時間が流れている、ということなのでしょう。


この幸せを異常!と思わないように、

ぜひまた来たい、すてきなすてきな場所でした。

祝!青島ビール台湾生産開始!

台風と共に始まり、終わった台湾旅行では、
ビールをいっぱい飲んだ。

台風のため、見どころはすべてお休みだった
1日観光ツアーでも、
何とか入れた台湾料理店で
牡蠣のオイスターソース炒めや
海老とネギの卵焼きなどに
うまいうまいと喜びつつ飲んだし、

雨の中のショーロンポー名店めぐりでは
スープにくぐらせて食べる一口サイズのショーロンポーや
かぶりつくと肉汁がじゅわーっとあふれる肉饅頭を
アチアチとさんざん食べたあと、
待ちに待った最後の店で、
閉じ込めたスープが透けるほど薄ーい皮が美しい
ショーロンポーと一緒にビールを楽しんだ。
(最初の店からビールを飲むと
最後の店まで食べ切れない恐れがあったため)

ただ、これらがすべて「台湾ビール」なのが
ややつまらないと思っていた。
飲食店にある台湾製ビールというと、こればかり。
台湾でしか飲めないビール、もっと他にないのかな。

と思っていたら、あったのだよ。
テレビで台風番組を見ていたら、
ものすごくはりきったビールのCMが始まった。
何でも、青島ビールの生産工場を
何億円もかけて台湾内に作り、
その生産が始まった!とのこと(たぶん)。
麦芽にこだわり、水にこだわり、
ついに台湾生産青島ビールが完成した!
そう元気な声が叫ぶのである(たぶんね)。

すっかり馴染みになったコンビニに
その缶は並んでいた。
今夜の宴を彩るのは、夜市で買った
鳥の部位いろいろピリ辛煮込みと、
台湾生産青島ビールに決定。
当然乾杯の発声は、「祝!台湾生産!」。
たしかに青島ビールの味がするそれは、
ビニール袋の中でからまり合う
鳥の脚とか羽とか肝のおどろおどろしさを
何やらうまくごまかしてくれるようで、
私たちはピリピリ辛い脚の指を1本ずつはがしながら、
台湾最後の夜を楽しんだ。

台風の夜の台湾ビール

ちょっと早めの夏休み。台湾に行く。

この4ヶ月、本当に忙しかった。
毎日食事はコンビニ弁当、毎日帰りは終電、
深夜のテレビで見るのはお笑い芸人だけだった。

そんな暗黒の日々がやっと終わったのです。
5日間だけだし、予算も限られてるが、
どこか素敵なところに旅行にでも行って、
おいしいごはんを食べ、おいしいビールを飲もう!

そう思って決めた台湾旅行だったのに。
私たちが乗ったチャイナエアライン機とちょうど同じように
台湾を目指して突き進んでいた大きな台風があったのだ。

私は雨女らしい。
何の自慢にもならないし認めたくもないが、
昔から肝心なときに雨が降る。
古くは入学試験の日から、
ロケの日、旅行の日、デートの日まで。
天気図に映し出された
台湾をすっぽり覆うほどの巨大な雲の姿を見て、
家族や古い友人は大笑いをしていたらしい。

着いた次の日のテレビは、朝から特別報道番組。
死者が出た1994年、1996年の台風に匹敵する
巨大さとのこと(と言ってるような)。
台北市はすべての公的機関の臨時休業を宣言し、
美術館や博物館はもちろん
頼みの綱の三越やらSOGOやらDFSまで
全部お休みになってしまった。

こんな日を救ってくれるのはビールしかない。
強風に斜めになる傘を握りしめ、コンビニへ。
安室奈美恵の新曲が流れ、アサヒやサッポロが並ぶ店内は
旅情も何もないが、こんな日は頼りになる。
台湾ビールと書かれた同じメーカーの3本を買って
飲み比べてみることにした。

3種類同時に飲みたくて、
ホテルの部屋にあったグラスや湯飲みを総道員する。
湯飲みに入れられた時点でそのビールには
ハンデがつきそうだが、遊びだからまあいいのだ。
3本の内訳は、
シンプルな「台湾ビール」と
3枚のメダルが描かれた「台湾ビール GOLD MEDAL」と
「台湾ビール 生」。
「生」はやや水っぽく感じられ、充実感に欠ける。
「GOLD MEDAL」が飲み応えがありウマイという結論になった。
ツマミの緑茶味ポテトチップスがセンター前のクリーンヒット。
ただおもしろいと思って買ったんだけれど、
さすがはお茶の国、
緑茶の香りと甘みと苦みが絶妙で
芋を油で揚げたものとは思えない妙な爽やかさがあり、
とってもおいしい。

おいしいビールとツマミを食う。
日本感あふれるコンビニのおかげで、
旅最大の目的は、何とか達成されたのでした。