上陸記念のひとりベックス | いろいろおいしい。

上陸記念のひとりベックス

急に決まった出張に準備もままならず、
おまけに風邪までひいてよろよろと成田へ向かう。

しかし出張先は何と、ビールの国、ドイツ!

十数時間のフライトを経て、
たどりついたフランクフルトは寒かった!
今日はホテルに一泊し、
明日、2時間に1本のローカル列車で
目的地イーダーオーバーシュタインへ向かう予定。

ホテルについては、不安はなかった。
日本でチェックしたHPは、日本語完備の立派なもので、
何と言っても心くすくられたのは、
いくら飲んでもタダというミニバー!
着いたら、仕事用のちゃんとした服にでも着替えて
レストランでのディナーに挑戦し、
部屋に戻ったらゆっくりミニバーのビールを飲もう。
なかなかいいんじゃない、とまで考えていたのでした。

ドイツらしくベンツのタクシーに乗って
ホテル名と住所をドイツ語で書いたメモを見せ、
無事ホテルに到着したところまでは予定通りだったのだけれど。
スーツケースを引きずって入った薄暗く狭いロビーは、
何をするでもなくぼんやりしている
なぜかターバン姿の男たちであふれていた。
ひとりしかいないフロントの男の英語もさっぱりわからず、
ガタガタ揺れるエレベーターに乗ったときには、
ささやかな夢はすっかりしぼんでいた。

さらなる決定打は、部屋のミニバーがカラだったこと!

さっきのフロントマンに訴える気力はなく、
すきっ腹をかかえて不毛なホテルを出る。

夕方のフランクフルト駅は、
見渡す限りどこまでもプラットホームが整然と並び、
多くの人が忙しげに行き交って、ぱりっと活気あふれる場所だった。
駅舎の中にはピッツァやサンドイッチや
クレープ、ドーナツの屋台が軒を連ねていて、
小ぎれいな書店やギフトショップもある。
うれしくなって、
色とりどりの屋台をしばらくひやかしたあと、
人が集まる店をじっくりチェック。
結局、じゅうじゅうと焼きたてのピッツァを出す店で、
水玉のようなプチトマトがかわいいピッツァと、
野菜をぎゅうぎゅう詰め込んだサンドイッチをずらり並べた店で、
モッツァレラチーズとトマトのスライスをはさんだバケットを
明日の朝のために購入。
最後に、缶やペットボトルが並ぶキオスク風の店で
数種類の缶ビールを買うと、真っ赤な毛のマダムが
「ダンケ」と言ってくれた。ドイツです。

駅を出ると、すっかり暗くなっていてあわてた。
知らない街を歩いた緊張のあとでは、
さっきまで全然落ち着かなかったホテルの小さな部屋が
頼もしい味方のように思えてくるから単純で。
やれやれと開けた500ml缶のベックスが、
ドイツ上陸最初のビールとなりました。